自分らしく生きられる街。ニューヨーク
- 2021.02.19
- アメリカ移住者の声「Hello!アメリカンライフ」
ニューヨークに渡って5年。アイルランド出身の女性と結婚し、永住権も取得した栄さん。結婚後は家族も増えて、今では二人の娘さんと奥様の4人家族でニューヨークのマンハッタンで暮らしています。当時から現在に至るまで不動産業界で働いてきたということで、今回は仕事をはじめたきっかけとアメリカでの日常についてお話しを聞きました。
前回のお話しはこちら「911の混乱下。始まったNY移住生活」
不動産業界で働く事になった経緯をお聞かせ下さい
永住権も取れたし職業の選択肢も一気に増えたんですが、僕はその時30歳。自分に何が出来るか、どんな職業が適しているのかを考えました。弁護士や医者になるには年齢的にも遅すぎるし、すでに家族があるので、そこを目指して何年もかかるようなことは出来ません。
永住権を取る前にはアルバイトで家具のレンタルやウイークリーマンションの斡旋をする仕事をしていたことがあります。ビジネスで赴任してきた方を対象にして、期間限定の滞在ならば処分も困らないレンタル家具がお薦めというわけです。空港まで出迎えに行って、まずは2週間ウイークリーに入居していただき、生活をはじめるための準備をお手伝いするんです。
その仕事を通して、不動産関係の基礎知識があったし、ニューヨークでの生活も長くなり十分な土地勘もありました。不動産の仕事ならライセンスを取ればよーいドン!で仕事が出来る。そう考えて今の仕事に就いたんです。
お子さんも生まれたそうですが、出産にまつわるエピソードをお聞かせ下さい
出産も自費だと100万円くらいかかってしまう
日本で出産する場合は費用についてあまり心配することもないと思いますが、アメリカは皆保険制ではなく、医療保険も自己加入となってます。出産についても保険に入っていなければ自費です。自費だと100万円くらい掛かると思いますが、僕も妻も保険には加入しているので金銭的は大きな負担はありませんでした。
出産のための入院は3日だけ
もうひとつ、日本と大きく違って困ったことになったのが入院は3日となってる事ですね。例えば夜に産気づいて8時くらいに病院に入ったとしたら4時間後の深夜0時で1日というカウントになるんですよ。それから2日後にはもう退院です。
生まれたばかりの赤ちゃんを抱いて、家に帰っても僕と妻の二人だけでいきなり育てていくことになりましたが、分からない事ばかりでした。僕らは二人とも移民ですから、それぞれの両親は日本とアイルランドにいるから急に子育てを手伝ってというわけにもいかない。さあ、どうするどうする?!っていう感じで当時は大変でした。
二週間後に届いた子供のSSN
子供の誕生ではもう一つ印象に残る事があり、生まれて二週間くらいで政府からの郵送物が届いたので、何かと思って開封すると子供のSSN(ソーシャルセキュリティーナンバー)でした。これを手にしたとき、自分の事を振り返りましたね。SSNが中々取得出来ずに困っていた時の事を思い出して、あんなに苦労してやっとSSNを取ったのに、この子はアメリカで生まれた子だから、何も手続きをしなくても生まれてから二週間でSSNが自動的に送られてくる。この時自分の立場を再認識しました。
ニューヨーク生活で感じる日本との違いはありますか
多様なアイデンティティが混在する社会
いくつかありますが、決定的に違うと思うのは自分らしく出来る事でしょうね。いい意味でも悪い意味でも自分らしく生きていけるということを強く感じます。今となれば日本に帰国したり、SNSで日本の話題に触れると、そうでない場面が多くて違和感を感じることがあります。
例えば女性服や化粧品などを見ても、日本では見た目でも統一的な流行があってそこからずれてしまうと妙に目立つことがあるけど、ここではそういう事がない。他者との違いは当たり前で自分の常識は他人にとっては非常識な時もある。ニューヨークではここに暮らす人が互いを尊重し認め、それぞれのアイデンティティーに従っているのがよくわかります。窮屈な感じがなくてそれがすごく楽な事でもあるんです。
都会でも小さな事で時間的な余裕を感じる
ニューヨークの市内での移動手段として地下鉄を多用します。これは東京や大阪でも同じだと思います、コスト面で安上がりだということ、それと市内はやはり道路が渋滞する時間帯もあるからです。
地下鉄はかなり発達していて、24時間運行しています。それと日本との決定的な違いは、ニューヨークの地下鉄には時刻表がないのです。日本では数秒の誤差もなく電車がホームに入ってきますが、それは逆に凄すぎる運行管理で、他国では真似出来ないでしょうね。それだけ時間に正確だから、例えば出勤や通学、他者との合流なども数分の遅刻も許されないという社会的な風潮もありますよね。
ニューヨークでは待ち合わせにしても15分くらいの遅刻も許容範囲です。地下鉄に時刻表がないことでもわかるように、お互いがそれほど細かく秒刻みで時間にシビアになることもないんです。
ライドシェアを使えば安く安心して移動出来る
日本でも耳にしたことがあると思いますが、ニューヨークを車で移動する時、以前はイエローキャブが主流でした。料金も比較的安く便利です。最近ではこの他にライドシェアのUber(ウーバー)やLyft(リフト)などが普及してます。アプリですぐに出発地まで来てくれます。現金がなくても支払いまですべてアプリで完結するので便利がいいです。それと一番のポイントは利用者もドライバーもお互いがレビューを公開出来るので、高評価を得るためにドライバーもマナーがよくて安全性も高いのです。夜中に人の少ない地下鉄に乗るのが怖いと思った時も、イエローキャブやライドシェアで自宅まで直接帰ることが出来ます。
ニューヨークならではの緊迫感
ニューヨークは世界中からあらゆる人種と多様な価値観の人達が集まって形成されている都市ですから、日本の常識では理解出来ないというか、日本の感覚を捨ててリセットしなければ暮らしにくい側面もあると思います。
人種や宗教、考え方の違う人達の間で衝突が起こることもしばしばあるので、そういうことを前提として緊張感を持って自己防衛しながら生活するのが当たり前になってきます。例えば人種間の差別などは何かをきっかけに急激に拡大し、暴動を引き起こすことも多々あります。そういうことが日常的にあるので、自分や家族を守るために常にアンテナを張っておくのが常識なのです。
日本は世界的にも安全で治安のよい国と言うことで有名です。夜中でも一人歩きできるし、路上に寝ていても身ぐるみ剥がされるようなこともなければ、乗降客の少なくなった終電の駅で襲われるようなこともないでしょう。それだけ安全な環境が当たり前になっているのです。日本でも治安の悪い繁華街とか、夜中に暴走族が溜まるような危険地帯はあるけど、それがすごく限られた狭いエリアなだけです。
しかし、ニューヨークに限らず、そういった危険とリスクは世界中では想定内です。当たり前のようなことですが、夜になって人の顔が見分けられないような時間帯に人通りの少ないところを出歩くのは危険です。危ない時間帯に危ないところには近付かないというような当たり前の判断が大事なのです。
物価の高いニューヨーク、日本と比べて意外な面も
家賃の高さは世界一!?
僕が住んでいるのはマンハッタンのウエストハーレムという地域です、ニューヨークの中心部で、セントラルパークもすぐ近くにあって住み心地はいいです。しかしその分家賃は高いですよ。日本の間取りで2LDKだと30万円くらいします。1LDKでも20万くらいはします。日本からの留学生などに人気の地域がブルックリンやクイーンズですが、そのあたりの相場も1LDKで最低15万円くらいします。
ニューヨークは路上駐車OK
世界的な大都会ということもあり、地価や家賃が高いのは当然ですが日本の都会と違ってニューヨークは路上駐車がOKなんです。もちろん有料で借りる駐車場もありますが、数は少ないです。そこにお金が掛からないので、東京や大阪の駐車場代の高さや駐車違反の取締の厳しさは逆に凄いと思います。
外食も日本に比べてかなり高い
身近なところの物価では外食が高いですね。これは家賃から考えてわかると思いますが、お店を借りるのも高いので、商品の料金にもそれが反映されているわけです。例えばビッグマックのセットだと1,000円くらいです。
僕がニューヨークに来た学生の頃は朝食にコーヒーとドーナツをよく買ってましたが、当時はそれが1ドル20セントくらいでした。ドーナツだけでも50セントだったのが今ではドーナツ一個で1ドルです。ニューヨークらしいジャンクフードでチキンオーバーライス(ケバブ)がありますが、それも当時は3〜4ドルくらいでしたが、今では7〜8ドルくらいします。飲み物を買ったら9ドルになります。
500円でランチを食べれる日本はすごい!
日本では500円で食べられるワンコインランチなどがあり、安くて量もあるしクオリティーも高い。バリエーションも豊富ですよね。これは凄いです。丼物とうどんに味噌汁とちょっとしたおかずまでついて500円。こんなランチはニューヨークで食べる事は出来ません。500円ではスタバでコーヒーを飲む程度。サンドイッチ一個で6ドルなんですから。
気軽に行けない病院。医療費がとにかく高い
出産の話でも出てきましたが、なんと言っても高いのは医療費です。本当に何でこんなに高いんだと思います。薬も凄く高いので病院には気軽に行けるものではないです。保険に加入していてもホームドクターを受診すれば診察だけで3,000円くらい。投薬があると軽く1万円コースです。
アメリカ生活の日常はどんな楽しみ方がありますか
アメリカはスーパーが面白い
例えば身近なところだと、スーパーの買い物は面白いです。全米にチェーン展開するトレーダージョーズ、ここのトートバックは日本でもちょっとしたブームになってますね。お薦めはホールフーズで、オーガニック食材が有名です。それからまとめ買いは日本でもお馴染みになってきたコストコのようにメジャーなスーパーもありますが、ニューヨークは多国籍で多様な食文化の人が沢山暮らしているので、郊外にいくとその地域に多く暮らす国の人向けの独特のスーパーがあります。例えば豚の耳とか、サボテンとか、アロエなど普段見かけないような食材も沢山あります。見たことのないようなラベルのビールがズラッと並んでいて、味もわからないからとりあえず買ってみようとか、見て回るだけでもちょっとしたアミューズメント施設みたいに楽しめます。
近くにはきれいなビーチも。郊外は自然がいっぱい
ニューヨークはまさに大都会で、立ち並ぶビル群や街の喧騒が思い浮かびますが、海沿いの街ですからビーチも近くに点在してます。ケネディ空港の近くにはロングビーチもあり、車で1時間くらい走れば自然が広がりきれいなビーチも沢山あります。となりのニュージャージーには山間部に国立公園も多く、手付かずの自然もしっかりと守られているんですよ。
ちょっと車で走れば、すぐに海や緑の多い地域が広がるので、アウトドアを楽しむ人も多い。そういうエリアが広大でキャンプ場などの施設も充実しています。混み合うこともないし思いっきり楽しめるんです。
スノーリゾートも近場。冬はスキーも楽しめる
日本でもニュースで見かけることがあると思いますが、ニューヨークは冬場になると結構雪も積もります。これは大阪や東京など日本の大都市ではないことで、このインタビューを行った日には今シーズン二度目の大雪で、マンハッタンにも40センチくらい雪が積もりました。スキー場も近くにありますから、冬は家族で楽しんでます。
都会的な楽しみ方だけではなく、市内にもすぐ近くにセントラルパークもあり、郊外には自然がそのまま残っているので、子供がいる家族でも目的に合わせて色々な楽しみ方を見付けることができるのもニューヨークの魅力ですね。
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